佐藤の凶行を許し、永井圭と中野攻にも逃げられた戸崎。
亜人管理委員会から呼び出された彼は、後輩である曽我部に迎えられる。
泉と共にヘリコプターから降り立った戸崎に、曽我部は「先輩は亜人管理委員会から除名されます」と告げる。
だが、その指令は直前で撤回されていた。佐藤の新たなテロ計画・第2ウェーブの予告が出されたためだった。
第2ウェーブのテーマは『浄化』。
田中が拘束中に見聞きした、15名の亜人管理委員会及びその運営に関わった利権を持つ者たちを殺害する。
戸崎は管理委員会からその阻止を命じられるが……。
「そしてこれが――カウントダウン開始の合図だ」
若井が射殺された。
佐藤の暗殺リストトップに名前が挙がっていた男だ。
若井の死と同時に、佐藤が言うところの第2ウェーブが開始された。
そして、これは続く第3ウェーブ――最終ウェーブの始まりでもあった。
佐藤の次のターゲットは桜井和夫という男だった。
佐藤らはアジトとして使用している町工場へ戻ると、早くも次の作戦の準備を始める。
薄暗い室内で、顔型の石膏に粘土を盛るゲン。
同じ室内で、フォームラテックスの溶剤を混ぜる高橋。
果たして彼らの次の計画とは……。
桜井の搭乗していた航空機が静岡県沖に不時着した。
桜井を殺害した佐藤が、飛行機のドアを爆破し、逃走したためだった。
警視総監は警察の威信と誇りをかけ、佐藤逮捕に全力を傾けると表明したが、街では混乱が広がっていた。
そのころ、圭はある疑問を胸にオグラ博士を訪ねていた。
その疑問とは自分のIBMについてだったが……。
圭の悩みを知らない戸崎は、どのタイミングで佐藤を待ち伏せするのが得策か、圭に相談を持ちかける。
次のターゲットは岸祐二だったが……。
「お前の友人は少年院にいる」
突然、戸崎に告げられた圭。
彼は一瞬怯むが、すぐに考え直す。
これから起こることを考えれば、そこが一番安全な場所だと思えたからだ。
その少年院では、奇妙な事件が起きていた。
琴吹タケシという17歳の少年が、院を脱走。
2日後、自発的に戻ってきたのだ。
だが、その脱走経路はわからず、本人も「気づいたら外にいた」と主張するばかり。
扱いに苦慮した院長はこの件を「存在しなかったこと」にし、彼を集団寮に戻す。
そこは海斗のいる部屋だった。
殺害リストの×印が三分の一を越えた。
だが、日本政府は依然、佐藤との交渉を拒否していた。
圭たちは実戦を想定し、実地訓練に移る。各チームは3人編成。
圭をアルファ隊のポイントマンに据え、セカンドとテールを黒服たちが固めるという陣形だった。
そのころ、戸崎は亜人管理委員会に呼び出されていた。
オグラ・イクヤ博士の死亡状況を調査するという名目で、アルメイダとマイヤーズという2名の国防総省職員が送り込まれてきたためだ。
戸崎は2人の追求をうまくかわしつづけるが……。
厚生労働大臣の前のターゲットが殺害され、ついに佐藤捕獲計画を実行に移す時が来た。
だが、肝心の戸崎がアルメイダによって連れ去られてしまう。
拉致現場に遭遇した泉は、戸崎救出を試みるも、マイヤーズのIBMに阻まれる。そのまま泉自身も倒れ……。
泉の脳裏には、1年以上も前の情景が甦っていた。
世界のすべてに裏切られ、憎しみに支配されていた時に出会った、ひとりの男。
彼は泉に自分の置かれている状況と、家族について教えてくれた。
それだけではなく、その後の彼女の生き方についても……。
戸崎を乗せ、走り去る車を見た泉は、単独でアルメイダらを追う。
しかし、彼らを止めることはできず、アルメイダたちは米国大使館へと向かう。
大使館に逃げ込まれたら戸崎の救出は絶望的になる。圭はIBMを使い、彼らの車を追撃。
IBMは建ち並ぶ住宅街を疾走し、アルメイダの車を捕捉する。圭はその動きを冷静に観察し……。
そのころ、都内の高級レストランには、厚生労働大臣が姿を見せていた。
絶対に漏れないはずの大臣のスケジュール。だが、佐藤たちは大臣の予定を正確に掴んでいた。
「残るターゲットはひとり。武蔵重工の橋口会長だ。取締役会が開かれる3日後の19時、殺しに行くよ」
佐藤が出した犯行日時指定の声明。
メンツを潰された日本政府は、ついに最後のカードを切る。
亜人制圧に特化した部隊――対亜人特選群の正式投入を決定したのだ。
彼らは戦闘のプロフェッショナルであるだけでなく、武蔵重工が開発した特殊な武器を貸与されていた。
瞬時に網膜を損傷させるレーザー。威力を上げたワイヤレス・テーザー・ガン。IBM対策の小型インパルス放水銃など……。
多彩な武器を手に、亜人の捕獲に向かうが……?
「ここからは――火と刃物だけの、原始的な戦いだ」武蔵重工に突っこんだトラック。その荷台にはEMP――爆薬発電機が積まれていた。すべての電子機器が使用不能となり、警戒に当たっていた機動隊員はパニックに陥る。
すでに準備を整えていた対亜隊員たちは、最新装備を捨て、通常兵器で侵入した亜人たちと戦い始める。
ビル内に潜伏していた圭たちも、暗闇の中で孤立する。だが、圭は「この状況は逆にチャンスです」と言い切り、IBMを発生させる。圭が目を付けたのは、エレベータシャフトだった……。
佐藤を本気にさせた圭。その代償は高く付いた。佐藤IBMによって倒れる泉、攻。
無残にも叩き潰される黒服たち。恐怖を感じた圭は、戦意を喪失し、崩れ落ちる。
佐藤ら亜人テロリストは、地下武器庫を経由し撤退する。
武蔵重工が開発した、ある兵器を手土産に……。
かんぽの宿に戻ってきた戸崎は、「おまえがついていながらなんてザマだ!?」と圭を責める。
圭はこの敗北の原因がすべて自分にあると認め、部屋に引きこもる。
一方の戸崎も、亜人なんかと手を組んだ自分がバカだったと嗤うが……。
「1週間後の午後12時までに、日本を明け渡してほしい」
佐藤の突拍子もない要求に、すでに緊急事態宣言を発令していた政府は、改めて「国家の危機である」との声明を発表する。
戸崎は亜人対策の専門家として佐藤を阻止しようと動くが、肝心の圭が戦う気力をなくしていた。
陸上自衛隊も、人質と化学兵器を押さえられた状況ではヘタに手を出せず、ただ司令塔を包囲し、狙撃犯を待機させただけだった。
そのころ、圭の妹・慧理子は、入院先から母親に電話をかけていた。病院内にも不安が広がっていたが……。
佐藤が放ったミサイルは、首相官邸付近に着弾した。佐藤には日本政府と交渉する気など最初からなかった。
そのことに気づいた奥山たちは佐藤から離れ、戸崎に連絡を取る。
自衛隊駐屯地に潜入した米軍は、佐藤のトラップにかかりながらも、神経ガスを積んだミサイルの撤去に取りかかる。
続いて、探索班が地下の配管施設で佐藤の逃走経路捜索に入る。
彼らはそのまま佐藤追跡に移ろうとするが、ペンタゴンからの指令により断念する。
米軍のさらなる計画を知ったコウマ陸佐は激怒するが、日本政府に拒否権はなかった。
「佐藤さん、みんな…、あんたの遊びに付き合うのには…もううんざりしてるんですよ!」
起爆装置を押す圭。佐藤と田中の周囲や頭上で、爆発が起こる。大量の瓦礫に押しつぶされる2人。が、次の瞬間、佐藤も起爆装置を作動。圭たちの足元が崩れ、佐藤もろとも巨大な地下壕へと落とされる。
次に目を覚ましたとき、佐藤と同じ空間にいたのは泉と戸崎だった。圭たちは、2人の救出に向かうが……。
またしても作戦の裏をかかれた圭。計画の失敗が招くものとは……。米軍による神経ガス散布が迫るなか、圭たちは佐藤に最後の戦いを挑む……!